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素人化する風俗

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日経新聞の記者である、鈴木涼美の記事が興味深い。彼女は自身がAV女優であることを伏せて、「AV女優の社会学」という本を上梓した東大院卒の才媛である。


彼女が週刊文春にAV女優の経歴を暴かれたことに対する寄稿がとても興味深い。

 

『デリバリーヘルスやDCが風俗から「場」を取り除いたことで、プロと素人の境目を極限まで不可視にしたのと似ている。綺麗なホテルでオトコと性的な行為をして代わりに何かをもらうという行為自体は、そのオカネの何割かをお店にとられるかどうかという点を除いてプロでも素人でも変わらない。そういった意味で、もともと海外映画から連想されるような売春婦に比べて素人っぽい日本の風俗嬢が、さらに「風俗嬢」という一応の定義を脱ぎ捨て始めて久しい。』


現在の風俗業界が、素人色を強く打ち出すようになって、一般男性が風俗に通う敷居を低くしたことは、以前のエントリーでもご紹介した。

風俗嬢が素人化に向かうことで、昔のトルコ風呂のようないかがわしさが無くなり、誰しもが気楽に風俗を利用し、テレビタレントが公共の場で、風俗の話を軽々しく口に出来る時代になっているのだ。


ここ数年の間に、より素人らしさを演出するために、「即尺」を基本プレイとした店舗が増加している。即尺とは、一緒にシャワーを浴びずにプレイを始めることを指す。シャワーで丁重に身体を洗われて、陰部に消毒液を塗りたくられるとき、男性は一瞬、これは風俗だ、と現実に立ち返ってしまう。即尺を売りにしている店舗は、男性を夢から醒まさないように趣向を凝らした、大袈裟に言ってしまえば、男性版ディズニーランドを実演しているのだ。


その夢の世界では、普段知り合うことがないような美女が恥ずかし気に服を脱ぎ、その素人っぽさに似合わぬような大胆なプレイで男性の昂ぶる欲望をあらゆる方法で満たしてくれる。


男性版ディズニーランドは全国のあちこちで24時間開催され、来客数は実際のそれに比べても遜色はない。


一方で、恋人プレイができない、玄人らしさを売りにしている風俗嬢が、昔に比べて稼ぎが薄くなったと嘆いている。彼女たちが今更、時代に沿った素人化の道を歩むことは、ほとんど不可能である。大衆ソープや違法な援デリやDC、或いは痴女店のような店舗で生き抜く術はあるが、恋人プレイを売りにする、素人化した風俗嬢に収入面で勝つことは、年々厳しくなっている。


素人化に限らずとも、最近の風俗嬢は風俗で働くことの後ろめたさを感じない女性が多い。彼女たちはFacebookで仕事の話を投稿することは少ないが、LINEのタイムラインでは、仕事の愚痴などを隠さずに投稿している。


もはや、プライベートにおいても彼女たちは、自覚しないうちに、プロと素人の境目を自らが不可視化し始めているのだ。


いつか、風俗嬢という呼び名は消えてしまうかもしれない。セックスワーカーという名称も相応しくないだろう。